東京都の新型コロナ専門家会議 最高の警戒レベルを維持

新型コロナウイルスの感染が急速に拡大している東京都の専門家の会議は、都内の感染状況と医療提供体制について、いずれも最も高い警戒レベルを維持しました。専門家は、「医療提供体制の深刻な機能不全の発生が予想される」として改めて危機感を示し、新たな感染や重症患者の増加を防ぐことが最も重要だと訴えました。

都の専門家の会議は24日の会合で、都内の感染状況と医療提供体制について分析・評価を行い、先週に続きいずれも最も高い警戒レベルとしました。このうち、感染状況は、「感染が拡大していると思われる」と総括しました。

専門家は、新規陽性者数の7日間平均が今週は先週から100人余り増えておよそ617人になったとして、「急速に増加している」と指摘しました。そのうえで、「爆発的に増加する前に最大限の感染拡大防止策を直ちに実行し、新規陽性者数の増加を徹底的に防御しなければならない。今が瀬戸際だ」と呼びかけました。

一方、医療提供体制については、「体制がひっ迫していると思われる」と総括しました。

専門家は、「入院患者数が非常に高い水準のまま増加しており、医療提供体制の深刻な機能不全や保健所業務への大きな支障の発生が予想される」と指摘して改めて危機感を示しました。

そのうえで、「新規陽性者数の増加を直ちに抑制し、重症患者数の増加を防ぐことが最も重要だ」と訴えました。

小池知事「Xマスパーティーなど控えて」

モニタリング会議のあと、東京都の小池知事は記者団に対し、「大変厳しい状況だ。この年末年始こそコロナに対応する重要な時間だということを都民と共有したい。感染拡大防止策をしっかりとらなければ、ここを機にまた感染が拡大するおそれがある」と述べました。

そのうえで、「帰省のほか、クリスマスパーティーや忘年会、新年会は控えてほしい。高齢の方や基礎疾患のある方、それにその家族には一層の警戒をお願いしたい」と呼びかけました。

また、小池知事は、「国が緊急事態宣言を出しても、都の措置はお願いでしかなく、だからこそ特別措置法を変えてほしいと言っている。効果が出る方法でないと意味がなく、罰則についても、まず、持つものを持ったうえで進めることが抑止力になる。しっかりとした特別措置法にしていただきたい」と述べました。

一方、モニタリング会議に出席した東京都医師会の猪口正孝副会長は、都内の陽性率が7%台まで上昇していることについて、「接触歴不明の患者が増えているので、検査が行き届いていない人たちがいる可能性もある。戦略的に検査を増やしたほうがいいのではないか」と述べました。
24日のモニタリング会議の中で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、23日までの7日間の平均がおよそ617人で、前の週からおよそ104人増えました。

増加比はおよそ120%と、前の週のおよそ121%に続き高い水準で推移しています。

専門家は、「急速に増加している。複数の地域や感染経路でクラスターが頻発しており、感染拡大が続いている。通常の医療が圧迫される深刻な状況で、新規陽性者数の増加を徹底的に防御しなければならない」と指摘しています。

そのうえで「現在の増加比が4週間継続すると、来月21日には1日に1279人の新規陽性者が発生し、さらに上昇すると爆発的に増加する」と分析し、最大限の感染防止策を直ちに実行するよう呼びかけました。

今月21日までの1週間で確認された4165人を年代別の割合でみると、
▽20代が最も多く26.8%でした。
次いで
▽30代が20.1%
▽40代が15.3%
▽50代が12.7%
▽60代が7.0%
▽10代が5.4%
▽70代が5.2%
▽80代が3.7%
▽10歳未満が2.3%
▽90代以上が1.5%でした。

65歳以上の高齢者は前の週より80人増えて572人となりました。

専門家は「重症化リスクの高い高齢者の家庭内感染を防ぐためには、外で活動する家族が感染しないことが最も重要だ。軽症や無症状であっても感染リスクがあることに留意する必要がある」と指摘しました。

一方、感染経路が分かっている人のうち、家庭内での感染は42.3%で、感染経路別では21週連続で最も多くなりました。

年代別にみると80代以上を除くすべての年代で、家庭内感染が最も多くなりました。

80代以上では、病院や高齢者施設などの施設内での感染が73.5%と最も多くなっています。

このほか、感染経路が分かっている人のうち、施設内は18.2%で、職場内は13.8%、会食が7.3%、夜間営業する接待を伴う飲食店は1.5%でした。

専門家は、感染経路が多岐にわたっていると分析したほか「日常生活の中で感染するリスクが高まっている。70代以上では施設での感染が大幅に増加していて、高齢者施設における感染予防策の徹底が求められる」と指摘しました。

そのうえで「保健所業務への大きな支障の発生や医療提供体制の深刻な機能不全を避けるための最大限の感染防止策が必要だ」と分析しています。

また、友人や家族との旅行、友人とのカラオケ、職場の会食、忘年会を通じての感染例が報告されていることを明らかにしました。

そして「年末年始や成人式などで人と人が密に接触して、マスクを外し長時間または深夜にわたる飲食や飲酒、大声で会話をするなどの行動は、感染リスクが著しく高まる」と指摘しました。

また「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路の分からない人は7日間平均でおよそ363人です。

前の週よりおよそ70人増え、これまでで最も多くなりました。

増加比はおよそ124%と、前の週のおよそ126%に続いて高い水準で推移しています。

感染経路が分からない人を年代別にみると、20代から50代では60%を超え、60代は50%を超える高い水準となりました。

専門家は「感染経路が分からない人が今の比率で年末年始を越えても増え続けると、4週間後にはおよそ2.4倍の1日858人の感染経路不明者が発生する。今が瀬戸際であり、最大限の対策を直ちに講じる必要がある」と強い危機感を示しました。

このほか、今月21日までの1週間で確認された新規陽性者のうち19.1%が無症状でした。

都は、都外に住む人がPCR検査のためだ液を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けが出たケースを除いて分析・評価していますが、今週はこうしたケースが139人いました。

医療提供体制

検査の「陽性率」は、23日時点で7.4%と前回の6.7%から上昇しました。

先月下旬から増加傾向で、先月後半からは6%台の高い値で推移して今週は7%を超えました。

一方、入院患者は、23日時点で2103人で、1週間前の今月16日の時点より143人増えています。

専門家は「今、余力がないところを何とかやりくりしている状況だ。入院患者は非常に高い水準まで増加していて、医療機関の体制がひっ迫している。現在の増加比が1週間続くと、年末年始に休日体制となる医療機関の許容範囲を超え、医療提供体制の深刻な機能不全などの発生が予想される」と指摘しました。

また、入院患者の受け入れ態勢がひっ迫して受け入れ調整が難航していることも明らかにし「特に透析患者や小児患者の受け入れ調整が難航している。待機を余儀なくされる例が多数生じていて、休日体制となる年末年始には、さらにひっ迫する。直ちに新規陽性者数を大幅に減少させるための抜本的な感染防止対策を講じる必要がある」と強い危機感を示しました。

このほか、23日の時点で自宅で療養している人が1886人となっていて、専門家は「自宅療養する人の増加で、健康観察を行う保健所の業務が増大している。自宅療養へのフォローアップ体制をさらに充実させる必要がある」と指摘しました。

また、都の基準で集計した23日時点の重症患者は前回の1週間前と同じ69人でした。

年代別にみると、▽30代が1人、▽40代が5人、▽50代が6人、▽60代が17人、▽70代が21人、▽80代が17人、▽90代が2人で、▽男性は56人▽女性は13人でした。

専門家は「今の動向が継続すれば、年末年始は重症患者の受け入れが困難になる。重症患者数は新規陽性者数の増加から少し遅れて増加してくることや、ICU=集中治療室を使用する期間が長期化することを念頭に、病床確保を進める必要がある」と指摘しました。

今月21日までの1週間で都に報告された亡くなった人は29人で、29人のうち25人が70代以上でした。